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2014/10/20

黒い土の秘密

ウブドを歩くと道路脇に土の山があって、歩きづらいことがある。通行量の多いラヤ・ウブド通りなんかだと、ひやひやしながら歩かなくてはならない。この夏、1年ぶりに訪れたウブド界隈は相変わらず、新築、増築中の建物が目についた。お宿、レストラン、カフェ、スパ等々、観光客や長期滞在者のニーズに応えるための建築ブームなのだろう。人気の田園風景をめぐる散歩道を歩いても、視界を遮るものが増えていることに唖然とする。

観光立国いや観光立島というべきバリの発展は、肝心のバリの魅力を犠牲にして成り立っているのではないか。訪れるたびにウブドは変化している。田んぼに囲まれたロケーションに魅せられて、絶対、泊ってみたい!と思ったホテルも、翌年行ってみたら、目の前に新しいヴィラができていた。。笑えないホントの話。

道路脇の土の山は建築ブーム、観光ブームの象徴だろう。しかし、この土はいったいどこから来るのか?
その背後の事情を追った記事を読んだ:"Black Sand: Ubud Backstage"

以前、バリ島東部へ行くとき、たくさんのトラックを見かけた。重いトラックが走るので、道路はボコボコだとドライバーさんが話してくれた。実際に穴があいている場所もあった。そのときの話では、アグン山から土や砂利を運んでいるということだった。あまり気に留めなかったが、事態はかなり深刻なようだ(但し、記事はアグン山ではなくバトゥール山の話)。

トラックが工事現場にやってくるのは夜だ。ウブドなどは昼間の交通渋滞が激しいから、夜しか身動きが取れないだろう。通りに土を下ろしたトラックは、バトゥール山へと戻り、夜明けとともにまた活動を開始する。火口原(crater floor )の周辺を走り、呼び止められるのを待つ。地元の人たちがふるいにかけた土を買い集めると、また工事現場へと向かう。ウブド近辺でトラック1台分の土砂が120万ルピア(約1万円強)で取引されているという。

サンゴ礁からできる白砂が枯渇した今、バトゥール山の黒い土 "Batur Black"は新しい資源であり、今の建築ブームを支えるために欠かせない。そして、この新資源は、これまで火口原という貧しい地域に住んでいた住民にかつてない経済効果をもたらしている。 "Black Sand"が"Black Gold"(石油)と呼ばれる所以だ。
ほとんどの場合、一般市民が自宅の裏庭や他の土地を見つけて掘っているのだが、中には事業として行われている場合もあり、数十メートル幅で十メートル以上の深さを掘削しているところもあるという。範囲はどんどん広がり、家や道、村や寺に行き当たってはじめて作業をストップする。今では家も寺も、不安定な崖の上にかろうじて建っている状況である。

このような資源開発では、環境が破壊され、最後には資源が枯渇するに至る。従来見られたのは、外部の企業が地域コミュニティを搾取するという構図であったが、バトゥール山周辺の場合は、地域コミュニティが自らの土地を切り刻んでいるのだ。
その行為は環境を破壊し、しかも違法であると、だれもがわかっている。しかし、地方自治体は見て見ぬふりをしている。そこには政治的な思惑がからんでいると筆者は指摘する。

リンク先から、わたしが衝撃を受けた写真をお借りした(©Rio Helmi )。美しい棚田の風景とは対照的で、これがバリの有名な観光地の近くだなんて、にわかには信じがたい。それでも、これもバリの現実なのだ。持続可能な観光とは何か、新大統領のもと、バリの未来を再考しなければ。

Blacksand_3

 

 

 

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