こぴっと、がんばれし!
ワールドカップが始まり、「こぴっと、がんばれし!」と声援を送っている人も多いのでは? これは、現在放映中の「花子とアン」で頻繁に登場する甲府の方言である。朝の連ドラはいつも幅広い層に人気なので、そこで使われる言葉の影響も大きい。今なら甲府の方言以外に女学生言葉がおもしろい。貧しい農家出身の花子は、特別に学費を免除され(その代わりに雑務を手伝うなどして)華族のお嬢様ばかりの女学校に行く。そこで話されている「ごきげんよう」や「よくってよ」を聞きながら、現在にも伝わる「女ことば」は、こういう女学校で生まれ、発展したのだろうかと思った。
ちょうど「翻訳がつくる日本語 ヒロインは『女ことば』を話し続ける」(中村桃子著)を読んでいたこともあり、こういう言葉がいつの時代まで使われていたんだろう、とかあれこれ考えている。
あと不思議なのが、別れ際のジェスチャー。わたしたちはバイバイと言いながら、手のひらを相手に向けて左右に揺らすのが普通だと思う。でも、花子たちは左右ではなく、前後に動かしている。よく皇族がされているように。ジェスチャーも言葉と一緒で、日本古来のものや、海外から入ってきたものが混在しているのかもしれない。
ドラマのほうは、ようやく花子が翻訳の仕事を始めたところでおもしろくなってきた。イギリスから帰国したばかりという男性から、本をプレゼントされたので、てっきりディケンズだろうと思ったら、マーク・トウェインだった。といっても、"The Prince and The Pauper"というタイトルを見ても、恥ずかしながら pauperの意味がわからなくて、どの作品かピンとこなかった。「王子と乞食」といわれたら、知ってるという人も多いだろう(※「乞食」は放送禁止用語なので取扱い注意)。
「現代アメリカ文学はマーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』から出発した」というのは、ヘミングウェイの有名な言葉である(…と文学史で習う)。特に、口語をそのまま文章にしたことで、情景を生き生きと描いたとされている。では、"The Prince and The Pauper"のほうはどうなんだろう。そもそも、これはイギリスが舞台の作品なので、イギリス英語を使っているはず。ちょっと読んでみたくなったので、iPadアプリでダウンロードして、ちらっと見たら、やっぱりthou,thy,theeの世界だった。パソコンなら、ココでイラストも含めて読むことができる。
ドラマの中で花子は、広辞苑よりはるかに大きくて分厚い辞書を引きながら、コツコツとこの作品を翻訳していた。教科書に主な単語の意味が載っていて、便利な電子辞書も持っている学生に、花子から活を入れてほしいものだ。「こぴっと、がんばれし!」
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